最後の訓練の巻
12/13(土)「最後の訓練」(第十一回目)
いよいよ今日が引き取りの日。
いつもより少し早めにドッグセンターに行く。
今日はぜひSさんにバリーを抱いてもらっての写真を撮りたい。そう思いながらバス停の前で「ここのバス停も通ったな〜」とカメラを取り出して電源をいれると、「CFカードを入れてください」の表示が出て目がテンに。しまったぁ〜〜!この前カメラ屋さんにプリントしにいったままコンパクトフラッシュを戻していない〜!急遽バス通りのコジマでおり、一番安い32MBのCFカードを買う。フィルムがいらないデジカメだけに盲点だった。バスが遅れていたので、ちょうどそこのバス停から乗れてうまいことセンターについた。
出迎えてくれたSさん。ちぇるこ君と会うと「いよいよですね・・・」とおっしゃり、どこかさびしげ。
トイレに行ったちぇるこ君と入れ替わりに犬丸が事務所に入り、あいさつするとSさんは「いよいよ、今日ですね」と言って黙ってしまった。預かり時に持ってきたバリーのハウス(移動用、家用)を組み立てているときも無言。
最近ちぇるこ君一人で来ることが多く、日常と化していたので、どうやらSさんにとっては犬丸の姿こそがバリーとのお別れを決定的に意味する象徴だったらしい。黒いコートに黒い帽子姿で子犬を引き取りに来た私は、さながら赤毛のアンでマシュウの臨終の際に表現された「死と呼ばれる刈り入れ人」になったような気分だった。
最初にバリーの1日の様子、トイレや食事のタイムスケジュールをうかがう。Sさんが心配になるくらい暗いトーンで教えてくれる。ちぇるこ君の話によると今週は時折こんな感じだったらしい。愛されているんだなあバリー。
グランドに出て最後の訓練をする。
まず犬丸からリーダーウォーク。続いてちぇるこもリーダーウォーク。エサでつらないとなかなか歩かない。

←慣れ親しんだこのグランド。
バリーちっさい。
つづいてマテの練習。かなりの確率で成功!オイデに比べるとマテは犬の本能に反しているので難しいのだが、先輩犬たちのように待っていて素晴らしい。しかし5歩後退するとついてきてしまう。それからちぇるこが後ろを向いてしまうとしきりにSさんの顔を見ていた。まだ意味がのみこめてないみたいだ。
オイデはこちらへ来たら座らせ、名前を呼んで顔を見たらエサをやる(左手でなでながらというのがポイント。残りエサを持っていてもやる)
犬丸もマテとオイデをやってみる。犬丸は最初の方でオペラント条件付けのやり方を習っただけでバリーに条件付けを繰り返したことはないのだが、「バリー」と呼んで集中させ、「マテ」の号令で「ハッ」としたような顔をし(命令が入った顔)自分が期待されて何をやるのか考えている様子が見られた。そして追いかけたいのをがまんしていた。(号令が1回だけ、目を見て集中させて・・・というが効いている)
何度か試したがかなりうまくいった。そこから「オイデ」をしながら下がると一目散に駆けてくる。やってきたところで腰をそっと上げて黙ると、ちゃんと顔を見て座った!感激!ちぇるこ君もSさんも「えらい〜!」「すごい〜!」と拍手。しばらく見ていなかっただけに進歩が顕著に見られて驚きだった。
続いてアジリティ。あいかわらず傾斜のきつい坂の上り下りは嫌いだが、高い机にもよじ登りがんばった。ちぇるこ君はゴールでサッとエサを後ろに隠し、名を呼んでこちらを見させてからエサをやっていた。名前を呼ぶと「何だろう?」とかなり反応するようになってきており、Sさんもうまくできたことを喜んでいた。
アジリティの前にピン子ちゃんの担当の訓練士の方が「バリーちゃん今日で終わりなんですよね。さびしいです」と話しかけてくれた。そういえばSさんから「さびしい」という台詞は聞いていない。担当官ではない人の方がそういう言葉で感情を表現しやすいのかもしれない。一番の当事者はなかなか言葉にできないものだろう。


事務所へ戻ってタッチングをしながら咳の薬の説明をうける。Sさんは訓練中からいつものSさんにもどり、明るく快活な感じを取り戻した。そして「今日からが始まりですよ」とエールを送ってくださった。ここでぜひお世話になったみなさんで食べてもらいたいとちぇるこが焼いたチョコレートブラウニーと、お手紙を渡した。Sさんは「今日中にもなくなっちゃいますよ」と喜んでくれた。
最後にお世話になったSさんの写真を撮らせてもらえるようお願いした。バリーを抱いた瞬間、Sさんは「バリーちゃん」と呼び、抱き上げた。撮った写真の一枚目。Sさんは笑っているような涙目の顔になってしまったが二枚目は笑顔の写真となった。

←本当に犬、飼い主共にお世話になったSさん。可愛がっていただいてありがとうございました。バリーの育ての親であり、教えを受けた恩人です。
「この写真を居間に貼って、訓練にくじけそうな時に見たり、バリーがだだをこねた時に見せたりします」と言うと笑ってらっしゃった。
Sさんは戸口まで見送りに来てくれる。重ねて御礼を言って本当にお世話になったオールドッグセンターを後にした。
帰りの道のり、バリーはずっと大人しくしていた。帰りの夜風で咳がひどくなったので温めて寝かせる。今夜からここが君のウチだよ。バリー君!がんばろうね。
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