愛犬HANGAR

驚きの園の巻     


11/19「驚きの園」

 さあ、訓練所に通うのもこれで三回目。今日もちぇるこ君とふたりで行ってきました。
こんにちは
Sさん今日もよろしくお願いします。

***

「今日はこちらの2階で・・・」
とSさんが中庭へ向かう建物の二階へ私たちを誘う。初めての場所へ連れて行かれてどきどきしながら上がってみるとそこではコンクリの床にたくさんの大型ケージや人が入れるケージがあり、そこにはシェパードの子犬たちがいっぱい!シェパードは子犬と言ってもかなり大きく、柴犬くらいあるのだが、中型のケージに二頭三頭入っていてなんだかむりむりした詰まり具合だった。
 先日のビデオや書籍で、広い場所よりも自分の体程度の狭い所の方が安心して休めるという犬の習性を勉強していたので平気だったが、そうでなければここはヒドイ動物虐待の場所だと勘違いしただろう。ケージにむりむりと張り付いて興味津々の子犬たちに見送られながら、私たちはコンクリの床から1mほど高くしてある不思議な部屋に入った。

***

 入った瞬間、奇妙な感覚が私たちをとらえた。そこは8畳ほどの畳敷きの部屋で、コンロや流しがあったり、ソファやベッドがあり、一見ワンルームに見える部屋で、最初は訓練士さんの住み込み部屋かと思ったのだが、感覚的に何かがおかしかった。例えば汚れ。微妙に汚れ、ささくれた印象があり、体育倉庫のようなほこりっぽさが空気ににじんでいる。コンロに置かれたやかんも無造作に置かれているだけで使っているような形跡がない。そう、生活していればあるようなふきんや食器、カレンダーなどあたたかみのある生活感が欠如した部屋。必要な物だけが無造作に置いてある。まるで舞台のセットだ。
 おそるおそる畳を踏みしめながら進んでいくうちに犬丸はあるものを見つけてぎょっとした。そして、この部屋が犬の室内訓練用の部屋だと確信した。見なかったが隣でちぇるこ君が同様にぎょっとして硬直し、心拍数が跳ね上がっているだろう様子が容易に想像できた。
それは・・・

ソファの上にぽんと置かれていた子供サイズの人形だった。

 ちぇるこ君はだいの人形嫌いで人間に近ければ近いほど恐怖の対象なのである。そこにあったのはまさに子供サイズの人形で、横に倒すとまぶたをとじるというタイプのものだった。しかし例に漏れずさらさらの髪の毛がふわーと重力にひかれていたり、とじたまぶたがとじきれず、うすあきになっているあたりが人形感満点でちぇるこ君のかんのむしジャストヒットの一品であった。
 とりあえず犬丸が人形側に座って落ち着くと、そんなわれわれの心境を知らないSさんは「外の子犬のニオイが気になりますかね」などと気を使いながら、私たちに犬の雑誌をわたして読むよううながした。今日は勉強?と思って雑誌を読んでいると、Sさんはおもむろに切り出した。
「実は、バリーちゃんがこの部屋にいます。」
ええっ!?
部屋には人が入れそうなコンテナのような箱と布をかけられた小さなケーキの箱のような箱がある。
「こちらにいます」とSさんは小さな箱を指さした。
(あとで知ったのだが、大きいコンテナの方にはシェパードの母犬と11頭の子犬が入っていたのだ。ちょこっと見せてもらったのだが、耳が少したれた大きい子犬がむじゃむじゃと入り組んでこちらを見上げていた・・・。普通は6頭ぐらいなのて多産らしい。お母さんは正直言って座れない様子だった)

***

「今日はお部屋で無視無視作戦です。今から布をとりますから、お二人はそのまま本を読んでいてください」
やがて布がとられたが、私たちは本を読んだ振り。
バリーがそこにいるのか、キュウキュウと泣く声がする。
Sさんはバリーをサークルへ移し、排泄をさせるとまたケージへもどした。
そのまま無視をしている私たちに最近の様子を話してくれる。
朝方にいきなり吠えだしたこと、普段のすごしかたなどなど・・・。
その間もバリーはキュウーンと泣き声をだしていた。家では吠えまくりだったのでけっこうびっくりだ。途中でSさんが部屋から出て三人きりになる場面があり、吠えるかナーと思っていたが、鼻を鳴らして泣いているばかりだった。やがてバリーはケージに鼻面を押し当てたまま寝てしまった。
「じゃあ、このまま部屋を出ていってしまいましょう。それで鳴くか試してみます。その間に中庭でリーダーウォークの練習をしましょう」
 1階へ降り、中庭に出る通路に出ると、突然「ウォンウォン!!」とたくさんの吠え声が迎えてくれた。通路の隣の柵には成犬のシェパードがいっぱい!うろうろそわそわと歩き回っている。犬丸は前回一人で来たときが同じ平日の午後だったので慣れていたが、ちぇるこ君はビックリしたようだ。なにしろ三つの柵にそれぞれわんさかとシェパードがいて、同窓会でもひらいているような何十頭もの大パーティ状態だったからだ。
「この中でも順位がついているんですよ〜」とSさんが解説してくれる。
手前の柵の中では子犬(といっても中型犬以上ある)がじゃれあって、けんかのように噛み合っていた。後ろ足で立ち上がり前足をかけながら噛み合う様はカンガルーか野生のハイエナやジャッカルの群のようである。
「ああやって常にどちらが強いか試しているんです。」
はっきりいって中学生が一クラス暴れているようなでかい図体の狂宴を見て、びっくりすると同時に、犬というものに慣れることができるな〜と思ったのであった。コレに比べるとバリーはなんとちんまいことか・・・。
 さて、訓練はおなじみプードルのペペちゃん(名前については後述)とパピヨンのピン子ちゃんを使って、リーダーウォークやマテ、オイデの練習をした。ちぇるこ君ははじめてのリーダーウォーク。元気なパピヨンのピン子ちゃんとペアになったがぎくしゃくしてほぼロボットウォーク。とつぜんバレエのように方向転換するちぇるこ君にピン子ちゃんも跳びすざりながら対応しており、歩くというより踊っているようだった。しかし犬丸も一回目はそうだった・・・。実際自分の体を動かすしつけは飼い主の方が慣れていないと動けないのだ。実際、犬のしつけで必要なのは飼い主側の態度、行動であって訓練士にとっては、「飼い主のしつけ、訓練」であるといっても過言ではない。
 やがて犬をチェンジしてマテの練習。ところがピン子ちゃんはエサがあるとわかるとその手に向かって跳びまくり!!1メートルくらいの高さまで届くほどジャンプをくりかえすのでびっくりしてしまった。猫もブロック塀やタンスの上など、たいそうな高さまで登ることができるが、実は猫は手とツメをうまくつかった「壁面ウォーク」でありよじのぼるという感じだ(だから人体を登られるときはツメが刺さって痛い)。しかしパピヨンのジャンプはまさに四肢の力のみでジャンプしており、体重がないかのような浮揚感があり、まさに飛んでいる感じだった。
 中庭での訓練が終わったので、部屋へ戻る。バリーちゃんは鳴かずに寝ていたようだった。そのあとは事務所でバスが来るまでタッチングをした。ちぇるこ君がバリーをさわってなれさせ、寝かせるまでやってみる。Sさんはペペちゃん、犬丸はピン子先生を抱くことになった。ひっくりかえして抱こうとすると足をつんのめって抵抗するピン子ちゃん!ほんとうに活発な子だ。
「でもピン子ちゃんはもう4歳で二回も子供を産んでるんですよ〜」
ええっ!あまりに元気なので若い犬だと思っていた・・・。しかもピン子ちゃんはお産をしたので老けるのが早いという。たしかに頭や口元の毛が白い・・・。なのにすごいジャンプ力だ。通りかかったピン子ちゃんの担当訓練士さんも「飛ぶのが仕事ですから」と冗談を言っていた。ピョン子ちゃんに改名してもいいくらいだが、ピン子ちゃんという名前も泉ピン子のようで似合ってると思ってしまった。
 そして今日の終わりに、最後の驚きがあった。この訓練所に来て何度かプードルを見かけていたのだが、事務所でバリー君にのしかかっていたプードルは今日会ったプードルとは別犬だったらしくもらわれていったらしい。
「ピピちゃんはもらわれてしまったのでバリーちゃんにとってケージが広くなってしまったので、今日ごらんになった小さいケージに移したんです」
「? え、じゃあこのプードルちゃんは?」
「この子はププちゃんです。」
「? え、え??」
「ここにはパパ、ピピ、ププ、ペペ、ポポという五頭の犬がいるんですよ。」
ええーっ!?
そのプードルがペペだと思ってました・・・・。
「ペペとポポはシーズーのオスメスですよ」
ええーっ!?じゃあ先日シーズーちゃんで訓練させてもらった時に「ペペ」と呼んでいたのは聞き違えではなかったのか・・・。
「先日のビデオ講習の時におとなしくしてたのは・・・?」
「ププです」
「じゃあ、バリーに犬社会のことを教えてくれた先輩が・・・?」
「ピピです」
すいません、もうわからなくなってます・・・(笑)。
ポメラニアンとチワワの合いの子で「ポチ」といい、名前の付け方にはこだわりがないらしいオールドッグセンターなのであった。
 しつけはもちろんのこと、色んな犬のことにふれあえて勉強になる場所である。犬種によっての違いを知ることができ(例えばパピヨンがこんなに飛んだり跳ねたりが好きだとは知らなかったし(落ち着きはない)、ダックスと同じく足の短い中型犬のコーギーは牛の足を噛んで追い立てる牧羊犬なのでリーダーウォークの時に飼い主の足によく噛みつくそうだ)、またどの犬種にも言える犬の習性を学ぶことが出来る。ちなみに犬たちにとっては犬種の違いはたいした違いに感じないそうで大きさが違う犬や毛の長さが違う犬も、お互いにとってはただの個人たちにすぎず、群を形成するのだといいます(奥羽の軍勢だ)。結局、人間が無理矢理純血種を開発し、固定保持しているだけなんですねえ。ププちゃんは小さいプードルですが大きい犬に対しても気が強く、決して負けないのだそうです。

***

さ、今日もバリーとお別れ。まったく驚きの連続の訓練日でした。でも今日もうまくタッチングできて良かった一日でした。
シーズーのペペちゃんは本当目がでかい・・・。でもテリア種は一番こわいよー。
偏見かしら。小型犬って体だけ小型でも、中身は立派なイヌなんですなー。
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