愛犬HANGAR

オールドッグセンターのしつけ教室に行って来たよ! 後編     


〜あらすじ
 バリーちゃんのしつけにあたり、不安を感じた私たちは、頼りにしている書籍の著者、藤井さんが運営するしつけ教室に思い切って相談に行くことにした。訓練士さんがマンツーマンでやってくれるしつけ教室で何が得られるだろうか。当日、初めて尽くしの外出だったがバリーは平然とハウスの中で寝ていた。とうとうセンターについて、犬の吠え声とニオイにびびる人間たち!どうなるバリー!キミの明日はどっちだ?!

 時間より早くついたのでどうしようかと思ったが、センターからの声とニオイに圧倒された、私らは外で休憩することにした。ちぇるこ君は事務所へトイレを借りに行き、犬丸が一人でぼーっとしていると散歩中らしき近所の老婦人が話しかけてきた。

 実は道中でもそうだったのだが、ハウスを持っていると注目を引く。最初は「大荷物だな」程度の視線なのだが、中に子犬が入っているらしいとわかるとパッとみんな注目し、中を見ようと首を伸ばしてサーチしてくる。電車では「
ダックスだ!!」とささやかれ、ホームでは強面の年輩の男性が物欲しそうに話しかけたいそぶりをみせる。私もそういう「観客」側だったので、気持ちはよくわかるが、いざ「舞台」側にたってみると世の中の人がこんなにも子犬好きなのかと驚いてしまう。特に男性!!おじさまたちはキュンとせつない顔でいつもにもなく見つめてくるぞ〜!普段、無視しあうのがルールの交通や道で、普段しない人から注目されて特異な感じだった。しかしこちらとしてはなるべく子犬を刺激せず、怯えたり興奮させずに運搬したいので、私が冷たい顔をしていたらみんな名残惜しそうなすっぱいような顔で見送っていた。

 老婦人が飼いたくないのに夫が飼ってしまった三匹目の柴犬のしつけにどれくらい手こずったかという話を語り終える頃、ちぇるこ君が事務所の人ともどってきた。事務所の人に促されて、とりあえず時間まで待合い室の中で待つことになった。

 ドッグセンターの待合い室へ通された私たち。古びた待合室はもう、しつけ大会優勝のフラッグと賞状、トロフィーの山。壁には警察署長、警視長官からの警備に関する感謝状多すぎ!藤井さんはお父さんも訓練士だったようで、白黒でシェパードと一緒の写真があちこちに貼ってある。うーんすごいがちょっと落ち着ける雰囲気ではない(笑)。
 窓からは中庭が見え、大きなシェパードがうろうろとして大声で吠えていたり、ケージに入ったプードルが見える。遠くではたくさんのシェパードと訓練士が訓練をしている様子がうかがえる。椅子の後ろ側からは中型犬が喧嘩をしているような怒声。これは本格的な訓練所だ!どうするバリーって、お前また寝てんのかヨ!!
 時間まで待つと担当の訓練士の方がいらっしゃる。
こんにちは、よろしくお願いします!
訓練士の方は女性。女性の姿が多いのでそうかなと思っていたがやはり驚いた。訓練士のSさんはおとなしい白いプードルをつれていらした。
「第一回目はビデオ講習なので、バリーちゃんも一緒にこちらへどうぞ」
と案内してくださる。
 とプレハブの間のような場所をぬけて歩いていくのについていくと、大きいケージや物をつんである裏手を歩いていく。とにかく獣のニオイがすごい。まるでサティアンのようなところを迷わないように必死についていってビデオルームにたどり着いた。

***

 で、ビデオを見たわけですが、正直言ってNHKのビデオ上下巻見てるし、著書も読んでいるので知ってることを見るだけだろうとたかをくくってました。
 さっそく始まったビデオは民放のワンちゃん番組の録画のような物で、なーんだと思ってみていると、突然ぶつぎりに切れて、今度はNHKの海外番組の翻訳調の番組でオオカミの習性の内容だった。しかも番組の物ではないテロップが。ひとしきり説明が終わると、また違う番組に・・・。
こ、これは・・・!!
各番組の内容をチョイスして編集してある!!必要なコメントや映像だけを見せてすぐに切り替わってしまうので普通の番組のようなだらだらした間がない。印象的な部分だけを見せていく。
 訓練士のSさんは必要な部分では途中でビデオを止め、コメントを入れて短く解説する。例えば画面では「これがこのワンちゃんの特技です」とソプラノの歌手に合わせて遠吠えする様が映し出されているがSさんは「これは特技でも何でもなく犬の習性です。」と映像の意味を解説する。
 番組は多岐にわたり、中には訓練士の養成所での訓練風景のビデオや講習会の様子をとったものなどもあり、内容が
ひじょ〜に濃ゆかった。中でもオオカミの狩りのようすや牧羊犬が羊を追いたててまとめる様をを空撮した映像は面白く、本当はちぇるこ君と手を取り合って「面白いね」とか「すごいね」とレンタルビデオを見るようにいちゃつきたかったが、グッとこらえていた。やがて1時間が過ぎ、1時間半を越えると、さすがに見ているこちらも疲労してきた。どうも我が母校の大学の講義時間が「耐えられない時間」あるいは「寝てしまう時間」として私にはしつけられてしまっているらしい(笑)。2時間みっちりと目からうろこの内容と解説を聞いて、ビデオは終わった。

ホールドスチールとマズルコントロールの様子。
 ビデオが終わった後、いろいろと質問させてもらえたのでいろいろと聞いてみた。犬は権勢本能(順位を上げてリーダーになりたい)と従属本能(強いリーダーに従いたい)のうち従属本能を伸ばしてやる必要がある。人に甘えたがるダックスなどの小型犬は人が根負けして可愛がってしまう(=世話をする、言うことを聞く)のでこうした基本的な関係(人間が上位、犬が下位)ができにくいという。たとえばもともと従属性の高い性格の犬、弱い犬であればこの関係が確立しているので飼いやすいという(こういう犬はラッキーとのこと)。
 そのまま将来権勢本能が強くなると、吠える、かみつく、一人でいられないといったトラブルをまねいてしまうので最初のうちにきちんとこの関係を作らなければならない。例えば安心して寝る場所をハウス、トイレをサークルとして室内に放し飼いにしない、とか、出せと言っても無視する。あまがみをしたらホールドをして母犬が子犬をしつけるように従属姿勢をしつける。といった方法が必要となってくる。この基本的な関係さえ徹底されていれば、実際に放し飼いをしたりベッドで一緒に添い寝したり何をしても別によいということだった。
 きちんとしつけられるまではこうした生活をして、従属性を高めるとして、今回はホールドスチールとマズルコントロールを実演させてもらえることになった。自宅で見よう見まねでやってみたときは爆発したように暴れて(ミミズか!?)、ガウガウ吠えて怒るのでうまくいかなかったのである(あまがみもひどかった)。

***

 実はビデオの間、Sさんといっしょに白いプードルがいっしょにおり、なんと教壇の上で「フセ」をしてずっとじっとしていたのである。Sさんはバリーを使い、犬丸はこのプードルちゃんを使ってやってみた。プードルちゃんは大変おとなしく(おとなしいというより従順)でまたをパカーとひらいてさわりたい放題。マズル(口先)をにぎっても、左右に動かしても従順である。がまんしているのか、と聞いてみると、この子にとってしっかりと命令するリーダーがいてそれに従順である状態がとても安心で幸せなのだという。
 次はちぇるこ君がバリーで挑戦。ビデオの間中休んでいたバリーは眠いのか、Sさんがさわっている間はウソのようにおとなしかった。今度は・・・と、見ているとやっぱりだんだん暴れ出した!犬丸にタッチ。これまたぶんぶん首をふって嫌がる。
「あー嫌がりますね・・・。ちょっと貸してもらっていいですか?
 何やら空気の温度が変わったような予感を感じつつ「お願いします!」とバリーを渡す。今度はバリー、Sさんの腕の中でも暴れてかみだした!するとSさんがクッ!とアゴを手で上げ、制御する。また暴れ出すと口先をにぎってふる!それでも言うことをきかないバリーがさらに暴れ出すとバッとマズルをつかみ・・・「キャン!」と悲鳴。さっと手を放し、抵抗があると同じ事をくりかえす。このあいだSさんはいっさい口をきかない。
 ビックリして見ていると、力を緩めてもバリーは抵抗しなくなった。足先やしっぽ、歯など体をどこをさわられても嫌がらない状態を作ると非常によいのですみずみまでさわる。バリーは抵抗しようか迷っているようだが、少しでも抵抗してみるとサッと無言の拘束が来るのである。やがてバリーは力をぬいてなでられるがままになった。体をやさしくなでられ、気持ちよさそうにしている。「このまま身を任せて寝てしまうぐらいリラックスするとバッチリです」とSさんは笑顔になった。
 さっそくSさんに見てもらいながら実習。ちぇるこ君は指に包帯を巻いているのでなかなかうまくいかない。犬丸はなんとか抵抗を少なくさせるところまで実習することができた。
「抵抗していいのかな・・・?」
敏感なおててをさわられて微妙な表情のバリー。人間の顔をみてうかがってます。
でも人間は無言。

 この他、リードを使ったしつけなども教えてもらった。Sさんはプードルにわざとひざに飛びつくように命令し、飛びついた途端に首にショックをあたえて不快感を味合わせる様子を実演してくれたが、うちら二人はプードルが可哀想でおろおろしてしまった。このプードル君はSさんがバリーの相手をしている間も机の上でフセをしてじっと待っていたのであってピタリピタリと言うことを聞くのでビックリだった。
「でもこの子も最初はあまがみをして大変な子だったんですよ」
 最初に人間とのしつけの関係ができているので、犬は人間を信頼して幸せを感じている。そうすると「スワレ」や「フセ」等の訓練もしやすいのだという。やっぱりその関係が大事なんだナー。
ちなみに普通の子犬と比べてバリーくらい手が掛かりますか?とおそるおそる聞いてみると
「んー!
頑固ですねぇ・・・バリーちゃんは!しつけはかなり頑張らないと!」と言われてしまった。

 たっぷりと指導してもらった私らはSさんに御礼を言って第一回目のしつけ教室を終わった。二回目からは犬の問題にあわせてしつけを実演し、飼い主さんにわかってもらう(実際、しつけ教室で教えられるのは飼い主の方で、しつけられるのも飼い主の愛情や行動であった)。一応きちんとした金額をお支払いしたのだが、二人の感想は「この内容ならば安い!!」であった。

 帰りのタクシーを待つ間、ケージを借りておしっこをさせてもらった。とおりががった他の訓練士さんがびっくりして叫ぶ。「なにコレ!ちっちゃーーい!」事務所の女の人もSさんも最初「ちっちゃーい!」と驚いたのだった。しかし実習を終えたSさんはニヤリと笑い、「や、でもけっこうやりがいありますよ」と言う。他の犬が吠えまくる中、知らないケージに入れられて水をのんでいるバリーを見て、めがねの訓練士さんもうなずく。「ウチに来ていきなり水飲んでるなんてやるじゃん」すいません。その子、肝太で・・・。「やっぱり他の犬が吠えていたりするとびっくりしちゃうワンちゃんもいるんですけどねー」やっぱりそうですか・・・。


***

 Sさんに御礼を言って、帰路についた私たちだったが、もうバリーに気遣う心配はなかった。バリーは車に揺られようと、ハウスの近くでバイクが爆音でふかそうと、電車に乗ろうといっこうに平然と寝ていたからだ。
 家へ帰って落ち着いてからさっそく練習のつもりでホールドスチールとマズルコントロールをやてみた。
落ち着いて手をさわらせるようになったバリー。
んー、もう眠くなってきました。
今日はうまくいったかな??
 結局、ブリーダーさんの言うとおり、とにかく無視をして鳴きっぱなしにさせることを一週間始めることになりました。どうしても虐待や冷たい仕打ちのようで後ろめたかったのですが、今回のしつけ教室で実際の指導とその成果(プードルちゃんのリラックスした様子)を確認できたので、このやり方でよいのだと信じることが出来ました。
 なお、後日、図書館で予約した藤井さんの他の書籍が手に入り、そちらではしつけについてより多くのページが割かれていると共に、最も肝心なのは飼い主の「愛情の遮断」と「無視」だと言うことが繰り返し書いてあって、しみいりました。「甘えているのは犬ではなく飼い主ではありませんか」という台詞も激ヒットです(愛犬にラブラブで盲目というのは依存であって本当の愛犬家ではないのかもね・・・)。でも、「悪い犬はいません、かならずいい子になります。」という藤井さんの何百頭におよぶ経験談、書籍内容は精神的な支えになります。
 また、一部の薬局で手に入るSILENCIAという耳栓が非常に強力で、バリー君の絶叫をまるでいないかのように無視するのに大変な効力があることを発見。絶対に目線を向けない、声をかけないがやりやすくなりました。
 いつか、従順になったバリーとお部屋でいっしょに暮らせることを夢みつつ、私たちの努力は続くのでした・・・。がんばれバリー!お父さんもつらいががんばる!(涙)

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